認知症・糖尿病・骨折──重なり合う母の病との戦い

母のこと

新しい病院を受診したり、急な入院となったりすると、これまでの病歴や現在飲んでいる薬を細かく書き出す必要があります。母の場合、高血圧・高脂血症に始まり、認知症、てんかん、皮膚炎や掻き壊し、喘息…と、まさに病気のオンパレードです。その中でも「これだけは避けたかった」という病気があります。

何が原因なのか分からないまま迷走した日々

母はいつの頃からか高血圧と高脂血症の薬を飲み始め、時々お腹を壊して整腸剤をもらう程度の通院でした。しかしある日、「血糖が少し高いから、お薬を飲んでと言われた」と言うので、胸騒ぎがして次の受診に同席しました。

すると医師からは、「血糖値が高すぎて、ここでは診きれません。広域病院に紹介状を書きます」との説明。“少し”どころではなかったのです。

母を問い詰めると「先月はそんなこと言われなかった」との返答。しかし家に帰って薬を確認すると、高血圧・高脂血症の薬だけでなく、糖尿病の薬すらまともに飲めていませんでした。紹介状を持って広域病院を受診したときには、血圧は上が160まで跳ね上がっていました。

認知症が原因で飲み忘れて血圧や血糖が悪化したのか、逆に血糖・血圧の高さが認知症の進行を早めたのか──。結局どちらが先か分からないまま、病院と薬の日々が続いていきました。

骨折から足腰が急激に弱っていく

認知症の診断後、デイサービスに通うまでは、母は座椅子で一日中テレビを見る生活でした。一度転倒して肩を圧迫骨折してからは家事を一切しなくなり、朝食後はずっと座ったままの毎日でした。

デイサービスで歩行訓練を受けるようになり、杖で歩行できる程度には回復しましたが、家の中では私が支えてやっと歩ける状態でした。ケアマネージャーさんの勧めで三点歩行器の練習を始めたものの、ある日の夕方、ほんの一瞬目を離した隙に母が尻もちをついてしまいました。

助け起こそうとすると、聞いたことのない唸り声。「これはただ事じゃない」と感じ、慌てて救急車を呼びました。

診断は腰椎圧迫骨折。入院は100日以上に及び、リハビリ期はあったものの、多くはベッド上の生活となり、足腰はさらに弱ってしまいました。

どれか一つだけでも避けられたなら

糖尿病の数値は思うように改善せず、薬だけが増えていきました。食事にも気をつけ、夕食だけ宅食サービスに切り替えたところ数値は少し改善しましたが、お正月を挟むと決まって悪化し、根本的な改善には至りませんでした。

「糖尿病さえなければ、認知症でも足腰が弱っていても、好きなものを食べてご機嫌に過ごせたのに」そう思うことがあります。

また逆に、「認知症さえなければ、几帳面な母なら節制して運動し、自分の足で自由に歩けていたはず」と思うこともあります。

さらに、足腰がここまで弱くなっていなければ、少しきつめの運動にも挑戦できただろうし、以前から習いたいと言っていた絵手紙教室にも通えたかもしれません。そう思うと、どれか一つだけでも避けられたら、母の人生はきっと違っていた、と感じずにはいられません。