家族介護の現実と、プロに任せるという選択2

介護の知恵袋

介護のしやすい環境づくりとデイサービスとの出会い

ケアマネージャーさんや福祉用具専門店さんの力をお借りし、介護のしやすい我が家が整いました。その後、母はデイサービスに通うようになり、母を取り巻く環境はさらに大きく広がっていきました。

母にとってのデイサービスは「夢の国」

新しい環境に馴染めるだろうかと心配していましたが、その不安とは裏腹に、母はデイサービスに通う日を楽しみにするようになりました。

スタッフの皆さんはとても優しく接してくださり、家族以外から大切に扱われる経験の少なかった母にとって、それはきっと大きな喜びだったと思います。さらに、その施設ではお風呂が温泉で、週に2回も温泉に入れる母を、少し羨ましく感じたほどです。

家庭では気づかなかった一面や、意外にも運動や他の利用者さんとの会話を楽しめている様子を知ることができ、普段の生活だけでは分からなかった母の姿を知れたことが、私自身とても嬉しかったです。

また、機能訓練が充実した施設で、母は歩行能力を維持しながら、色塗りや計算問題、ゲームに熱中し、時には陶芸体験で作品を作るなど、本当に充実した時間を過ごさせていただいていました。

度重なる入院を支えてくださった方々

母は骨折、憩室炎、尿路感染など、この2年の間に何度も入院を繰り返しました。その度に、看護師さんをはじめ、多くの医療のプロの方々に支えていただきました。

それぞれの病気に主治医の先生がつき、特に尿路感染でお世話になった先生は、母だけでなく、介護をする私の状況まで考えてくださった、初めての先生でした。

「患者を治すだけでなく、退院後の生活がきちんと成り立つこと」
「患者本人だけでなく、介護する家族の負担をできる限り軽くすること」

そうした視点で向き合ってくださった先生のおかげで、今も自宅で母の介護を続けることができていると感じています。

また、退院後もバルーンカテーテルの管理に困らないよう、面会のたびに陰部洗浄やおむつ交換を、素人の私に根気強く教えてくださった看護師さんもいらっしゃいました。忙しい中で時間を割いていただいたおかげで、今では何とか母の処置ができるようになりました。

その他にも、リハビリ担当の方や嚥下訓練の先生方など、本当に多くの方々に支えていただきました。

介護を家族だけで続けることの難しさや、プロの支援を受けることの意義については、以下の記事でも深くまとめています。ぜひ併せてご覧ください。

▶ 家族介護の現実と、プロに任せるという選択(oyalog.org)

退院後、自宅での介護を支える体制

退院後、ケアマネージャーさんから勧められたのが訪問看護の導入でした。何かあった際、すぐに救急車を呼ぶ前に相談できる、看護のプロの存在です。

当初はよく分からず、「緊急時の対応は必要ですか?」と聞かれても、バルーンカテーテルの交換が主な目的だったため、「今のところは必要ないと思います」と答えていました。しかし、実際に在宅介護が始まると、夜中や早朝に対応が必要な場面があり、後から緊急対応も追加していただきました。

以前は母に異変があれば、すぐに救急車を呼んでいましたが、今ではまず訪問看護さんに連絡し、自分で対応できるか判断できます。必要に応じて自宅に来て診ていただき、それでも難しい場合は、在宅医療の主治医の先生へ連絡してもらい、最終的に広域病院へ救急搬送するという流れが整いました。家族だけで「どうしよう」と迷うことがなくなり、精神的な負担も大きく減りました。

また、以前は月に3〜4か所の病院へ母を連れて行っていましたが、在宅医療を導入したことで、月に一度、主治医の先生と看護師さんが自宅を訪問し、母の状態を確認してくれます。必要な医療物品も不足なく準備していただき、万が一の際にはすぐに対応してもらえる体制が整いました。

お薬も一つの薬局でまとめて受け取れるようになり、費用面でも、時間や労力の面でも負担が軽減され、とても助かっています。

在宅介護を支える心強い味方

母には嚥下障害があり、退院後も訪問リハビリを継続しています。入院中と同様の嚥下訓練を自宅で受けることができ、家族では判断が難しい場面でも、母の状態を見ながら「この程度なら大丈夫」と専門的な判断をしてもらえることは、大きな安心につながっています。

とろみをつけた飲み物を母が倒してしまい、その対応に追われていた時も、具体的なアドバイスをたくさんいただきました。

また、若い頃は「音痴だから歌いたくない」と言っていた母が、実は歌うことが好きだったと分かり、週に一度の嚥下訓練で聞こえてくる母の歌声が、今では私の密かな楽しみになっています。

さらに、歩行や動作機能の低下を防ぐため、運動リハビリもお願いしています。車椅子からベッドへの移乗や、長時間座ることによる姿勢の崩れの修正、家族では難しい負荷をかけた運動なども、積極的に取り入れてくださっています。

訪問看護や訪問リハビリの方々は、まず母の体温・脈拍・血圧を測定し、食欲、睡眠、排便の状態を確認します。さらに、胸の音や足のむくみなど細かな部分まで丁寧に診てくださるため、家族の不安も大きく軽減され、安心して在宅介護に向き合うことができています。

まとめ

母の介護は、決して家族だけで成り立つものではありませんでした。ケアマネージャーさん、医師、看護師さん、訪問看護や訪問リハビリの方々、そしてデイサービスのスタッフの皆さんなど、多くの専門職の支えがあってこそ、在宅での介護が続けられています。

母自身も、さまざまな人や環境と関わる中で、新しい楽しみや生きがいを見つけることができました。私たち家族にとっても、「一人で抱え込まなくていい」という安心感は、何より大きな支えです。

在宅介護は大変なことも多いですが、信頼できる支援の輪があることで、前向きに向き合えるものだと実感しています。